わたしのSTORY

子どもの巣立ち、静かな家で感じたこと~漠然とした寂しさからの小さな発見~

Tags: 子育て終了, 空の巣症候群, 孤独感, 自己発見, 50代の悩み

静かになった家と、心にぽっかり空いた穴

私の2人の子どもが、この春、それぞれ独立して家を出ていきました。上の子が社会人になり、下の子も大学進学で一人暮らしを始めたのです。もちろん、子育てを終えたことへの達成感や喜びはありました。ようやく肩の荷が下りたという安堵感もありました。しかし、それと同時に、家の中ががらんとしてしまったような、何とも言えない寂しさが私を包み込みました。

朝、キッチンに立つと、賑やかだった食卓が嘘のように静まり返っています。洗濯物も減り、それぞれの部屋のドアが閉まったままの光景に、胸の奥がチクチクと痛むようでした。これまで子どものために使っていた時間が、突然ぽっかりと空いてしまったのです。これから何をすれば良いのだろう、私の役割は終わってしまったのだろうか、という漠然とした不安が頭の中を巡りました。夫は仕事で忙しく、私のこの気持ちをどこにぶつければ良いのかも分からず、一人で抱え込む日々が続きました。

寂しさの中で見つけた小さな光

最初は何をする気にもなれず、ただ時間だけが過ぎていくように感じました。パートに出かけても、どこか上の空で、家に帰るとまた同じような気持ちが押し寄せてきます。テレビを見ても、雑誌を読んでも、心が動くことはほとんどありませんでした。

ある日、ふと、棚の奥に仕舞い込んでいた古いスケッチブックが目に入りました。それは、若い頃に私が趣味で描いていた絵のものでした。忙しい子育ての中で、いつの間にかすっかり忘れていた趣味です。すぐに筆を取る気にはなれませんでしたが、そのスケッチブックをただ眺めているうちに、少しだけ心が落ち着くのを感じました。

その日から、私は意識的に自分のための時間を作るようになりました。朝の散歩に出かけたり、これまで気になっていた近所のカフェで一人でお茶をしてみたり。特に何かをするわけではありません。ただ、外の空気を感じたり、コーヒーの香りに包まれたりするだけの、ささやかな時間です。

無理に前向きになろうとしなくても良い

そうした小さな行動を続ける中で、ある日、私は「無理に元気になろうとしなくても良いのだ」ということに気づきました。寂しさや不安を感じることは、決して悪いことではありません。長年大切に育ててきた子どもたちが巣立っていったのですから、そうした気持ちになるのは当たり前のことだったのかもしれません。

これまで「良い母であること」を一番に考えてきましたが、子どもたちが独立した今、少しずつ「私自身」を見つめ直す時間が与えられたのだと思うようになりました。すぐに新しい趣味が見つからなくても、友人との交流がすぐに増えなくても、焦る必要はないのです。

大切なのは、今の自分の気持ちに寄り添い、小さな変化や心の動きを丁寧に感じ取ることなのかもしれません。この漠然とした寂しさも、いつか新たな自分に出会うための大切な道のりなのだと、今は穏やかに受け止められるようになりました。

もし、今、あなたも私と同じように、静かになった家の中で何とも言えない気持ちを抱えているのでしたら、どうぞご自身を責めないでください。あなたの感じていることは、決してあなた一人だけのものではありません。ゆっくりと、ご自身の心の声に耳を傾けてみませんか。